

「学校の地下室にお化けが出るらしいぞ」
「そんなバカなことがあるもんか。おまえ、オカルト映画の見すぎだよ」
「なにいってんだ。ちゃんと先輩から聞いたんだぞ」
昭和四十九年八月十二日、九州佐世保市にある某中学校でのことである。

「その先輩だって、自分で見たわけじゃないでしょう」
村田美子さん(二年)も、お化けを否定する一人であったのだ。
お化けがいるらしいという生徒四人、それを否定する生徒五人で口論は続けられた。
「それじゃ、先輩のところへ行って、はっきり聞いてみよう」
村田さんたちは、さっそく近くに住んでいる先輩の家を訪ねた。
高校一年の先輩はちょうど帰ってきたばかりで家にいた。
その先輩は、自分が見たときの様子を身ぶりをまじえて話した。
「まだ信じられないわ」
先輩の家からの帰り道、村田さんたちの否定派が言った。
「嘘か、本当か、地下室へ入って調べてみようじゃないか」
飯島君がもちかけた。
彼はやや中立的ではっきりした態度は表明していなかった。
「よし、行ってみよう」