とくに夜、床に入ってから本を読むのが癖になっていた。
昭和四十二年四月のある夜。
「ひゃわ、出た!」
と、寝間着姿の弘一が、本を片手に握りしめて、部屋から飛び出してきた。
「どうしたんだ…。二十歳にもなって、みっともない…」
父親の私は、夜遅く子供のように騒ぐ弘一を叱りつけた。
だが…。
「お父さん、竹が…」
弘一の言葉を聞いたとたん、私も真っ青になった。
弘一の部屋に来てみると、青竹の先が四、五十センチほど畳を突き破って出ている。
ごく普通のものだが、我が米山家にとっては恐ろしい呪いの竹なのだ。
米山家は代々静岡県の三島市に住んできたが、十二年前、突然この青竹の呪いを受けるようになった。
部屋に竹が出た日から、井戸の水がぴたりと出なくなり私の父親が急にどす黒い血を吐いて倒れた。
あわてて医者を呼んだが、病名のわからない奇病だという。
父親は全身が紫色になって、だんだん意識がなくなり、数日後には死んでしまった。
すると、井戸の水が元通りに出はじめ、部屋の青竹はひとりでに枯れてしまった。
この奇怪な現象は、その後二回起こり、私の妻と娘が死んだ。
「たぶん、何かの祟りか呪いだ」
私は、何度か神主にお祓いをしてもらったのだが、効きめはなかった。
そのうえ、恐ろしい呪いの青竹が今度は息子の部屋に出たのである。
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