

私は読者から手紙をもらうと、記者を連れて出かけていった。
「本当に出るのですかね。僕は怖がりだからいやですね」
記者は目的の駅に着き、電車を降りるときになって逃げ腰なことを言い出した。
駅からタクシーで約二十分、その旅館は一般の旅館街からちょっと離れたところにあった。
昭和五十年三月十八日、奥日光でのことである。

「お客さん、どうしてこの部屋のことを…」
旅館に着くと、私は二階の「梅の間」を使わせてくれるよう頼んだ。
すると帳場にいた女主人が出てきて、私の顔を見るなり言った。
女主人は私をテレビなどで見て知っていたらしく、やむなくその部屋を貸してくれることになった。
「どうか原因を確かめてください」
女主人は自分で梅の間に案内してくれてから言った。
私がこのM旅館(女主人の希望によって本当の名前は伏せる)に現れるといわれる幽霊を調べにきたのは、東京の某商事会社のグループが次のような体験をしたからである。
🟧美女満載

永野さんら男女五人は二月の末、この旅館に泊まった。
その日、夕食後彼らは街へ出てスナックに入った。
「あの旅館には女の幽霊が出るんですよ。知ってますか?二階の梅の間と、二階の共同トイレにね…」
スナックで働いている男はそんな話をしだした。
その男はM旅館にも勤めていたことがあって自分でも体験したというのだ。
「そんなバカなことがあるもんか。きっとあの男は旅館で働いていて何かがあり、いやみを言っているんだよ」
永野さんたちは、だれ一人として男の言うことを信じなかった。
男三人は梅の間、女二人は向かいの竹の間で寝ることになっていたがトランプ遊びをするために、広い梅の間に集まった。
「どう見ても幽霊の出るムードじゃないわね」
大川友江さんは、トランプをやりながらスナックでの話を思い出して言った。
部屋は新しく壁などもまだまっ白であり、とても明るい感じの造りだった。

「幽霊なんてでっちあげられたものに決まっているじゃないか」
永野さんは頭から否定していた。
午前一時近く、大川さんがトイレに立った。
田村春枝さんを誘ったが彼女は応じなかった。
トイレは共同になっていて、女性用入口を入ると中には五つのトイレがあって、五つのドアがみな開いていた。
大川さんは向かって右から二つ目のドアを閉めた。
そして用をすませて立ち上がった。
「あっ!」
えり首にヒヤリと冷たいものが触れたのである。
だが、彼女はさして慌てもせず、きちんと身なりを整えてからドアに手をかけようとした。
「あらっ…」
ドアが開かないのだ。
ドアはまるで釘づけでもされたようにビクともしないのだ。
「だれっ、いたずらしてるんでしょう!」
大川さんは、ドアに耳をつけ、外の様子をうかがったのである。
だが、人の気配はまったくなかった。
🔷こちらもオススメ

ガタガタガタ!
はじめて青くなった。
恐怖感に震えながらドアを揺さぶったがビクともしなかった。
「ぎゃーっ、だれかきてーっ!」
大川さんは再びえり首に冷たいものが触れ、それを手にとって見ると、まっ赤な血であったとき、悲鳴をあげ気絶してしまった。

帰りの遅い大川さんを心配して田村さんが様子を見にきた。
そして、気絶している大川さんを発見したのだが、そのときドアはちゃんと開いていた。
「そ、そんな…」
大川さんは田村さんの言うことを否定したが、もしドアが開いてなかったら、田村さんが倒れている大川さんを発見し、一人で助けることはできなかったわけだ。
永野さんたちは、興奮している大川さんをなだめ、午前三時近く、それぞれの部屋に分かれて床に入った。
🟪人気記事

豆スタンドに照らし出された女性の姿は、やがて床の間に吸い込まれるように消えてしまった。
「見たよなっ、幽霊を…」
永野さんたちは頷き合った。
「この部屋なんですか…」
私と同行してきた記者は夜がふけるとともに落ち着かなくなり、顔色も悪くなった。
午前二時五十分、
「で、出たーっ!」
記者の布団の上に浴衣を血で染めた女の幽霊が現れたのだ。
こうして私たちは目的どおり、幽霊を目撃することができ、その調査をすることもできた。
大川さんがトイレで体験した出来事も永野さんと記者が目撃した幽霊も、原因は一つであった。
すなわち、六年前この梅の間で心中をはかった男女があって、女性だけが死んだわけだが、すぐには死にきれずトイレまで這っていき、そこで死んでいたのだ。
その女性の地縛霊なのだ。

🟨こちらもオススメ
はじめて青くなった。
恐怖感に震えながらドアを揺さぶったがビクともしなかった。
「ぎゃーっ、だれかきてーっ!」
大川さんは再びえり首に冷たいものが触れ、それを手にとって見ると、まっ赤な血であったとき、悲鳴をあげ気絶してしまった。

帰りの遅い大川さんを心配して田村さんが様子を見にきた。
そして、気絶している大川さんを発見したのだが、そのときドアはちゃんと開いていた。
「そ、そんな…」
大川さんは田村さんの言うことを否定したが、もしドアが開いてなかったら、田村さんが倒れている大川さんを発見し、一人で助けることはできなかったわけだ。
永野さんたちは、興奮している大川さんをなだめ、午前三時近く、それぞれの部屋に分かれて床に入った。
「ううっ、重いなあ…」
寝ついて間もなく、永野さんは胸に重苦しさを感じ、目を覚ましたが、
「ぎゃあっ!」
思わず悲鳴をあげてしまった。
なんと、浴衣を血で染めた女性が苦しそうに首のあたりをかきむしりながら永野さんの胸の上にのしかかっていたのである。
永野さんは、夢中で隣に寝ている早川さんと三波さんを揺り起こした。
「ううっ!」
目を覚ました二人も不気味な女性の姿に息を呑み、震え上がってしまった。
🟪人気記事

豆スタンドに照らし出された女性の姿は、やがて床の間に吸い込まれるように消えてしまった。
「見たよなっ、幽霊を…」
永野さんたちは頷き合った。
私と同行してきた記者は夜がふけるとともに落ち着かなくなり、顔色も悪くなった。
午前二時五十分、
「で、出たーっ!」
記者の布団の上に浴衣を血で染めた女の幽霊が現れたのだ。
こうして私たちは目的どおり、幽霊を目撃することができ、その調査をすることもできた。
大川さんがトイレで体験した出来事も永野さんと記者が目撃した幽霊も、原因は一つであった。
すなわち、六年前この梅の間で心中をはかった男女があって、女性だけが死んだわけだが、すぐには死にきれずトイレまで這っていき、そこで死んでいたのだ。
その女性の地縛霊なのだ。

🟨こちらもオススメ
コメントする